こんにちは、綾野です。
今日でシェアスタジオ最終日です。
荷物をパックして鍵を返して、さよなら。
ロンドンに来たばかりの頃
ジュエリーをつくる環境を
つくることがまず大変でした。
このスタジオにやっと落ち着いて
いざ作り出すと
なかなかうまくいきませんでした。
ここ数ヶ月、やっと
"今の私にできること"がつかめて
形にできるようになり
手伝ってくれる仲間もできました。
旅立ち前に師匠から
"今のあなたで海外に行っても
何もできないよ"
というニュアンスのことは言われていましたし、
現にそうだったと思います。
それでも、一人でやってみたから、
自分に何が足りないのか、
これから何をすべきか、
はっきり見えた。
師匠の元でずっとやっていたら
師匠の実力を自分の実力だと勘違いしたままで
いつまでも独り立ちする力がつかなかったと思う。
私にはこれが正解でした。
畳1枚分くらいの小さなスペースだけど
わたしの冒険が詰まった、
大切な場所です。ありがとう。
母が遺してくれた誕生石のトパーズでリングをつくりました
このスタジオで最後に
自分のためのリングを作っちゃいました。
誕生石のトパーズ。
これから新しい環境で頑張るためのお守りです。
このトパーズ、実は、
わたしが19歳の時に亡くなった母が
遺してくれたものなんです。
11月生まれのわたしにトパーズ、
12月生まれの妹にトルコ石、
それぞれの誕生石で
どこにつけて行っても
恥ずかしくないものを、
と生前買っておいてくれたのです。
彫金をはじめたころに、
地金を別のジュエリーに使うために
石を指輪から外したのですが
まだ私には早いかなと
ルース(石のみ)の状態で置いてありました。
次の進路が決まって
これからの世界になじむジュエリーもってないなぁ、
どうしよう・・・と考えた時にふと
このトパーズのことを思い出しました。
そうだ、今なら
作り手という意味でも
着け手という意味でも
あのトパーズに見合うような気がする。
そしてできたのがこちらのリングです。
(リング部分は祖父の結婚指輪を使用)
濃いオレンジのトパーズが
キラキラと輝いて太陽みたい。
仕上がったリングを眺めていると
なんだかお母さんが、
あんたのそのまんまでがんばりやーって
言ってくれているような気がしました。
自分の人生を生きる、もう逢えないあの人を感じながら。 ジュエリーはそのお手伝いをしてくれます
今年の3月、実は母の十三回忌でした。
そのために日本に帰る余裕もなく、
私は法事を欠席しました。
一般常識から見たら、
親不孝な娘なのかもしれない。でも
わたしは、
わたしのやりたいことをやることが
一番の供養だって信じてるんです。
母は50代前半で若くして逝ってしまった。
もっとやりたいことや
行きたい場所があったと思う。
私はその分までやりきりたい。
わたしが新しい景色に出会うたび、
お母さんもその景色をきっと見てる。
きっと喜んでくれている。
そう信じてやってきたんですけど
間違ってないよ、それでいいよって、
このリングが伝えてくれている気がします。
お母さん、わたし、仕事決まったよ。
やりたいことに一歩近づいたよ。
心の中でどんなに呼びかけても
返事は返ってきません。
でもこのリングからは
確かに母を感じます。
母が生きたこと、
愛してくれていたこと、
だから今わたしがここにいること。
想いのタイムカプセルみたいです。
死者からプレゼントをもらう、
自分が死んでから誰かにものを贈る。
実際にはありえないことですが
半永久的なジュエリーなら、
それが叶えられるんです。
ジュエリーの強い美しさは
色んなことを浄化して
ポジティブなエネルギーをくれます。
みていると元気になれる。
ジュエリーをやりたいのは
誰よりもジュエリーの力に救われているから。
ジュエリーを通して
大切な人を失った悲しみを癒すようなことをしていけたらいいな。
お母さん、ありがとう。
わたしがんばるなぁ。